まだ魔法があたりまえのように存在し、
天かける飛行艇が大空を埋めていた時代の物語。
“この空の彼方には、誰も行ったことのない浮遊大陸がある”
そんな伝説を夢見て、空賊に憧れる少年たちがいた。
『グレバドスの秘宝』に導かれ、消えゆく記憶の扉が開く。
空の彼方──
そこは、翼ある者の住む、忘れられし天空の地。
イヴァリースの大空の遥か彼方に蜃気楼のごとく浮かぶ
幾つかの大陸状の大きな島とそれを取り巻く小さな島々の総称。
神の領域に最も近く、太陽の加護を受けた
大いなる浮遊大陸(プルヴァマ)とされている。
それぞれの島に含まれる浮遊石の性質が異なることから、
島によって、気候の特色が大きく異なる。
各地でエグル族と呼ばれる有翼人が暮らしているが、
かつて繁栄していた彼らも減少の一途をたどり、
現在では、遺跡となった建物で
つつましい生活を送っているのみである。
翼をもつエグルたちの住居の入口は、空の高みにあることが多く
それが独特のレムレースの建築様式となっている。
レムレースは数千年前、この空の神「フォルサノス」によって
興された世界であり、彼は現在もこの世界を“聖晶石”という
魔石の力で司っていると伝えられている。
レムレースの周囲には、強力なミストの結界が張り巡らされ、
何千年もの間、外界からの接触が遮断されていた。
それゆえに、浮遊大陸レムレースの存在を知るものはなく、
わずかに地上の空賊たちの間で、“伝説の浮遊大陸”として
言い伝えられているのみであった。
背中に翼を持ち、自由に空を飛ぶ種族。
翼を除いた身体的特徴はヒュムと大差ないことから、
ヒュムの突然変異で生まれた種とも言われている。
寿命はヒュムよりずっと短く、40歳程度。
翼の維持に大きな負担がかかるためか、
あるいは何か他の理由があるのか、
老齢まで生き続けるエグルはほとんどいない。
若くして生命の終わりを迎えることも多く
“空に生きる者”の宿命として人生の意義を
深い悲しみの中にとらえている者も存在する。
イヴァリースのはるか上空に浮かぶ
幻の浮遊大陸“レムレース”で暮らしているが、
数千年の長さに渡り、外界との接触が一切なかったため、
その存在は“空の伝説”として
わずかに残されているのみであった。
彼ら自身の知的水準は低くないものの、
外界との交渉が皆無であったことから、
文化レベルはヒュムのそれに比べて前時代的。
森に住むヴィエラ族のように
自然との共存を望む生活様式である。
性格はきわめて穏健。
何事にも積極的な関心を示さないために、
不平不満を口にすることはないが、
その心はまた夢や野望を抱くこともない。
ゆえに、エグル族同士は争うことがない。
年若くとも、常に死期をみつめるかのような
達観した視線をもち、その姿を見た者には、
高貴で神聖な印象すら与えるという。
浮遊大陸レムレースには、異世界とつながる力をもつ小さな石「聖石」と、それぞれの島をつかさどる色鮮やかな巨岩「浮遊石」という特徴的な“石”が存在する。どちらの石もミストの力を秘めており、空賊たちの冒険心を魅了する美麗な結晶体であるその姿は、イヴァリースにおける魔石に似ているが、役割は異なる。
「聖石」とは、それに願うことでレムレース各地に点在する召喚ゲートを通じ「幻獣」を呼び出すことができる石である。
「浮遊石」はその名の通り、大陸を中に浮かせる原動力となる。それはまた、内包するミストのゆるやかな放射により、浮遊大陸そのものの風土に大きく影響し、島々の大いなる自然の生態系を織り成す石でもある。
「聖石」と「浮遊石」の源泉は、レムレース全土を支えている3つの「聖晶石」である。すべての聖石と浮遊石は、聖晶石からあふれたミストが周囲に拡散し、結晶となって生まれたものであると言い伝えられている。
3つの「聖晶石」の在処は明らかになっておらず、「聖晶石を統べる者は“永遠”を手にする」という伝説が、石に刻まれた“空の記憶”としてレムレースに残されているのみである。
レムレースには、各地に「幻獣」と呼ばれるモンスターが生息している。彼らは現世の生命ではなく、彼岸の地「幻獣界」と呼ばれる異世界からやって来たものだと言われている。彼らは、さまざまな姿かたちをしているが、共通するのはその肉体が“まぼろし”であり、死は存在せず、致命傷を負っても消滅して、幻獣界に帰るだけの“不滅なる存在”であるということ。ゆえに「幻獣」たちは、エグル族の間では「神の使い」であると言い伝えられている。
神の使いといえど、その行動は凶悪で粗暴。古代のエグル族はこの幻獣たちから身を守るため、「聖石」の力を借り、各地の「召喚ゲート」から自分たちの幻獣を呼び出し、自在にあやつる術を編み出した。この術が「召喚」と呼ばれるレムレースの魔法の力となった。
「召喚」の術には、その強大なる力ゆえに、レムレースの神フォルサノスが定めたと言われるいくつかの掟がある。
ひとつ、幻獣に聖石を“絆”として与え主従の契約を交わすこと。
ふたつ、呼び出された幻獣は召喚者に従うこと。
みっつ、技量を超えた数の幻獣をあやつることは死を招くこと。
この召喚のルールにより、大いなる力が過剰に用いられることなく、レムレースは平和の均衡を保っていた。しかし、近年、召喚の秘術を使いこなせるエグル族は減少傾向にあり、彼らの多くは野生の幻獣の脅威にさらされている。
その空にイヴァリースの空賊たちが石の力を求めて踏み込んできた時、神の意は背かれ、物語は動き出す。

